バイポーラトランジスタとは、半導体回路で信号を増幅・スイッチングを行う「トランジスタ」という半導体素子の1つです。昔から広く使われているトランジスタのため、「トランジスタ」と言うとバイポーラトランジスタを指すことが多い傾向にあります。英語だと「Bipolar junction transistor(バイポーラジャンクショントランジスタ)」で、頭文字を取って「BJT」と略されます。小さいベース電流に対し、その数十倍から数百倍ものコレクタ電流が流れる性質を持つのが特徴です。
半導体は、P型半導体とN型半導体の2種類に分類できます。ダイオードやトランジスタはこのP型半導体とN型半導体を組み合わせて使用しており、バイポーラトランジスタでは、2つのP型半導体でN型半導体を挟んだ「PNP」と、2つのN型半導体でP型半導体を挟んだ「NPN」の構造を取っています。いずれも片側には自由電子を放出する「エミッタ」、もう片方には放出された自由電子を正孔に収める「コレクタ」という端子が出ています。
P型半導体は正孔を持っており電子が足りていない状態、N型半導体は逆に電子が余っている状態の半導体です。PNP半導体の場合、エミッタ側からプラスの電圧をかけると、空乏層が発生します。すると間に挟まれているN型半導体から自由電子が供給されるようになり、正孔がコレクタ側へと移動して電流が流れるのです。NPN型半導体では、コレクタ側にプラスの電圧が加わるとエミッタ側のN型半導体と中央のP型半導体の正孔が結合し、空乏層が生まれます。さらにプラス電圧が加わると自由電子がベース側へ、収まりきらなかった自由電子はエミッタ側に流れることで、電流が発生します。
バイポーラトランジスタにはさまざまな種類があり、型番、最大定格、電気的特性でどのようなものなのか見分けられるようになっています。型番では、「2SA11~」は高周波用のPNPバイポーラトランジスタ、「2SB11~」は低周波用のPNP型バイポーラトランジスタなどと決められています。1993年にJIS規格が廃止されてからもJEITA(社団法人 電子情報技術産業協会)で使われているため、覚えておいて損はありません。
最大定格とは、超えてはいけない数値のこと。この数値を一瞬でも超えると、素子が劣化したり破損したりすることがあります。余裕を持たせるため、トランジスタを使用する際は最大定格の80%程度の電圧印加を行うことが大切です。電気的特質とは、その材料がどのくらいの電流を流すかを示す指標のこと。バイポーラトランジスタでは直流電流増幅率を確認します。直流電流増幅率が大きいほど、小さな信号でも大きく増幅させることが可能です。