GaN基板とは、GaN(窒化ガリウム)を用いた半導体の基板のことです。SiC(炭化ケイ素)と同様、地球上には存在しない物質のため、人工的に作り出す化合物半導体でもあります。身近なところだと、青色LEDやブルーレイディスクプレーヤー、レーザーダイオードの材料としても使用されてきました。

特徴は、バンドギャップが広く、絶縁破壊電圧強度と熱伝導率が高く、スイッチングが速いところ。オン抵抗が低いこともあり、パワー半導体としての活用が期待されています。一方で、ノイズへの耐性がSiよりも低い一面も。回路を書き込む際は、ノイズに対する欠点も補わなければなりません。

従来のGaNの製造法は、気相法が一般的でした。気相法とは、気体の中で少しずつバルク結晶を成長させ、半導体を造る方法です。しかし、気相法だと製造に時間を要するぶんコストがかさみ、GaNは高価であることが課題になっていました。

GaNの製造コストを抑えるための研究は現在も進められており、今までにNa フラックス法や、揺動法などが登場しています。Na フラックス法は、液体にした窒素とガリウムを反応させてバルク結晶を得る方法です。窒素とガリウムが溶け合いやすくなるよう、ナトリウムを加えるのが特徴。しかし、窒化ガリウムは結晶化するのが遅く、不純物が入らないようにするのは困難でした。そこで登場したのが、揺動法です。

揺動法では、不純物が入らないようにルツボを密閉したうえで、溶液の流れを作るために炉全体を揺らし続ける方法です。しかし溶液の流れを調整し、バルク結晶を均一に生成するのには一定の限界がありました。その後もプロペラ法・回転法をはじめ、様々な製造法が登場しており、製造技術の発展が待たれます。

近年では、経済産業省所管のNEDOの主導により、国家規模で製造技術が発達しています。2015年より、本格的なGaN基板の量産が可能になりました。今後はパワー半導体に加え、新時代EV技術や5Gへの貢献も期待されます。

新時代EV技術の分野では、GaNで造ったパワー半導体により、電力の効率的な制御ができるようになる可能性があります。また5G分野でも、GaNはシリコンよりも高速で電子を動かせるため、大容量のデータを瞬時に転送する技術が発展するかもしれません。また、デジタル化でサーバーの需要が高まったときにも、サーバーや基地局の電力消費を抑える効果が得られます。各分野での消費電力量が減少することで、カーボンニュートラルへの貢献も可能です。