カーボンナノチューブとは、炭素が作る六員環ネットワークが、単層もしくは多層の同軸管状になった物質のことです。電気的、機械的な性質に優れており、半導体・燃料電池・光学機器・建築材料のほか、プラスチックの添加剤や電極の導電助剤としても使われています。カーボンナノチューブの平均的な直径は0.4~50ナノメートルで、視認できないほどの微細さです。細さ・柔軟性・軽量性を備えており、「次世代の炭素素材」「ナノマテリアル」とも呼ばれています。
カーボンナノチューブはバント構造が変化する性質があり、それに伴い電気伝導率やバンドギャップも変わるため、シリコンの後を継ぐ半導体の素材として期待が集まっています。非常に高度な導電性・熱伝導性・耐熱性を有しているのも、カーボンナノチューブが半導体製造の素材として向いている点として挙げられます。具体的には、電流密度耐性は銅の1000倍以上、熱伝導性は銅の10倍以上あります。
カーボンナノチューブを、電子回路において電気の流れをコントロールする「トランジスタ」のチャンネルとして取り入れると、電子回路の小型化に効果的な高速スイッチング素子の役割を果たすことが期待されます。
カーボンナノチューブの製造法は、主にアーク放電法・レーザー蒸発法・化学気相成長法(CVD)の3種類です。これらの方法を改良・発展させてカーボンナノチューブを製造しています。アーク放電法は、溶接技術などで使用される「アーク放電」という現象を利用した方法で、炭素の源となるグラファイト棒を、2000℃以上で加熱できます。
レーザー蒸発法では、鉄やコバルト、ニッケルを混ぜたグラファイト棒を使用するのが特徴。電気炉に置いたグラファイト棒に2000~3000℃のレーザーを照射し、単層のカーボンナノチューブを生成します。化学気相成長法は、容器内に流した炭化水素ガスを媒介として、カーボンナノチューブを生成する方法です。容器内にガスを供給し続けることで、カーボンナノチューブ連続的に作れます。
カーボンナノチューブは、1991年に、NECの飯島澄男氏によって発見されました。発見から7年後の1998年には、CNFET(カーボンナノチューブ電界効果型トランジスタ)の室温での作動に初めて成功します。2001年にはカーボンナノチューブを使った集積回路が作動し、2013年になるとアメリカのスタンフォード大学が、カーボンナノチューブのマイクロプロセッサを試作。2010年代後半は、カーボンナノチューブを使用したトランジスタの微細化と高速化が進みました。現在も、世界中の研究機関や半導体メーカーが、カーボンナノチューブを半導体材料として使う技術・製品の開発に力を入れています。