エッチングとは、ウェハー上に加工を施す技術・工程のことです。金属板とエッチング液(腐蝕液)の化学反応を発生させ、要らない部分を溶かして除去し、材料の表面を加工します。もともとは銅版画に使う版板の加工技術として用いられていましたが、小さくて薄く、緻密な作業を求められる半導体づくりにも向いているため、現在は半導体の製造技術としても活用されています。半導体の製造技術におけるエッチングでは、原版を作る際にCAD(コンピューター支援設計)が使えるため、加工時間の短縮や加工パターンの変更に対応しやすいのがメリットです。

エッチングは、半導体製造の工程のうち、電気回路の設計やウェハーの作成などと同様に前工程に含まれます。いわば、半導体の組み立て等を行う後工程の準備段階の工程の1つです。ウェハーにエッチング加工を施す際は、はじめに「レジスト」という材料で、ウェハー上に残しておきたい部分を覆っておきます。続いてエッチングマシーンでエッチング液を散布し、除去したい部分の金属を溶かします。最後にレジストを取り除き、洗浄・検査を経てエッチングの工程は完了です。

エッチングには、ウェットエッチングとドライエッチングの大きく2種類の方法があります。ウェットエッチングでは、酸性・アルカリ性溶液のエッチング液を使って化学反応を発生させます。化学反応が起こるとウェハーの膜が削れるため、レジストで覆われていない部分を除去することが可能です。ドライエッチングと比べると、使用する薬剤や装置のコストが低いのが特徴。同じ溶液で複数枚のウェハーに加工できること、被加工物へのダメージが少ないことも、メリットとして挙げられます。

ドライエッチングは、高真空プラズマを用いたエッチングの方法です。別名、「プラズマエッチング」とも呼ばれています。真空空間に置いた被加工物に、ガスをプラズマ化して、化学反応と加速したイオンで膜を削ります。非常に緻密で繊細な加工を施せるのがメリットです。一方、ガスや装置が高額であることや、ガスの濃度と温度の管理、装置の使用法の理解など、様々なコストがかかるのがデメリットとされています。

エッチングの技法は、半導体や銅版画の版画を作る以外にも、幅広い場面で活用されています。写真の製版技術やインテリアデザインも、エッチングが使われている場面の1つです。半導体製造に使われるエッチングの技術は、形を変えながら意外と身近なところでもよく使われていることが伺えます。