化合物半導体とは、2種類以上の元素を材料にしている半導体のことです。シリコン単体を材料としたシリコン半導体よりも電子の移動速度が速く、高速信号処理に優れているのが特徴。低電圧でも作動できるほか、光に反応したり、マイクロ波を出したりする特性も備えています。これらの特性をもとに、発光デバイスや高電子移動度トランジスタなどにも活用されています。一方で、化合物半導体はシリコン半導体と比べると割れやすく、大型化が難しいのがデメリット。材料も、シリコンと比べると高価であるため、コストがかかりやすいのが難点です。

最初に化合物半導体は、2種類以上の元素を材料にした半導体と紹介しました。元素の組み合わせのバリエーションは幅広く、主なものとしてはⅢ族とⅤ族、Ⅱ族とⅥ族、Ⅳ族同士などが挙げられます。Ⅲ族とⅤ族の組み合わせはGaAs、GaP、InP等、Ⅱ族とⅥ族はCdTe、ZnSe等、Ⅳ族同士はSiC等です。

特に代表的な組み合わせはGaAs(ガリウム砒素)や、SiC(シリコンカーバイド)など。GaAsはシリコン半導体と比べると、半導体の材料の中を電子が移動する速度が5倍ほど速いのが特徴です。したがって、超高速コンピュータのIC、光通信や衛星放送の低雑音増幅器などに用いられています。また、化合物半導体の光に反応する特性活かし、半導体レーザーやLED、赤外線センサーに使われることもあります。

化合物半導体としての歴史もあり、1950年代から研究・開発者等が関心を寄せていました。1960年代以降、化合物半導体が普及すると、GaAsは、Ⅲ族とⅤ族を組み合わせた半導体のなかでは最初に利用が拡大していきました。

SiCは、高電圧・大電流・高温動作ができるのが特徴。絶縁破壊電界強度はSi(シリコン)の10倍、バンドギャップは3倍もあります。また、デバイスの作製に必要なp型、n型の制御が広い範囲でできるため、高速通信用機器などのパワートランジスタとして活用されています。

化合物半導体は、GaAsやSiCといった化合物でできた基盤の上に、薄膜を形成させて製造します。基盤の厚みは0.25~1mm、直径は2~4インチ(50~100mm)程度、薄膜の厚みは約0.05~0.2mmです。化合物半導体の製造工程はシリコン半導体とほぼ同じで、前工程と後工程に分かれています。前工程では、まず顧客の要望に応じて素子の機能と構造を設計します。その後、設計したものをウェハー上に転写してフォトマスクを製造します。後工程は、ウェハーを切断したり、検品・パッケージングをしたりする工程です。