ASIC(エーシック)とは、特定の機器や用途のために必要な機能を組み合わせて設計・製造する、半導体集積回路の分類の1つです。狭義には、電子機器メーカーなどが自社の製品に搭載するため、半導体メーカー等に依頼して作ってもらうオリジナルのICチップを指します。広義でとらえると、半導体メーカーが独自開発し、既製品として顧客に提供しているASSPを含むこともあります。
AISCは、電子機器を作動させるために必要な機能を、1つにまとめられるのが特徴。標準ロジックICやFPGAと比べると、実装面積の縮小、動作速度の向上、消費電力量の低減などの効果を期待できます。大量生産すると製造単価の面でも有利になるため、一度にたくさん製造するテレビ、ゲーム機、携帯電話などによく使われます。一方、開発期間が長く、固定コストが高いため、少数の製造には向いていないのがデメリット。また、不具合や仕様の見直しに対応するための、設計の変更が難しいのも難点です。
AISCの種類は、フルカスタムICとセミカスタムICの2つに分けられます。フルカスタムICは、ゼロから論理回路を書き込んでいくAISCです。設計者が自由に回路を設計できる一方、開発コストが高額になりやすい側面もあります。セミカスタムICは、基本的な回路や機能ブロックを組み合わせて作るAISCです。規格品や汎用品をベースに改良を加えることもあり、フルカスタムICよりもコストを抑えられます。
セミカスタムICは、設計手法や製造方法をもとにさらに細かく分類することが可能です。よく挙げられるのは、ゲートアレイ、セルベースIC、エンベデッドアレイの3種類。ゲートアレイは、あらかじめ回路が作り込まれている、半完成のセミカスタムICです。顧客やユーザーの要望に合わせて金属配線工程を行うだけで完成するため、短期的に提供できます。その反面、標準的な回路を組み合わせて製造することになりやすいため、集積度や性能は他のセミカスタムICよりも劣ることがあります。
セルベースICは、スタンダードセルの上に顧客が必要とする機能を設計して作るセミカスタムICです。スタンダードセルとは、半導体メーカーがあらかじめ用意している、標準的な回路のこと。ゲートアレイと比べると工期は長くなりやすいですが、その分顧客が求める機能を要際しやすいのがメリットです。エンベデッドアレイは、ゲートアレイとセルベースICの特徴を合わせ持つセミカスタムICです。セルベースICのように顧客の要望を満たすセミカスタムICを、ゲートアレイ並みの早さで製造できます。