CVDとは、物質の表面に薄膜を形成する方法のことです。「Chemical Vapor Deposition」の頭文字を取った言葉で、日本語だと「化学気相堆積」と表現できます。主な用途は、切削工具の強化膜や半導体の絶縁膜・保護膜の生成など。薄膜を生成する際に、原料ガスを供給するのが特徴です。

半導体基板に薄膜を形成する際は、基板の上に原料ガスを供給し、熱・プラズマ・光などによる化学反応を起こさせて原料ガスを励起・分解し、基板の表面に吸着させます。吸着した原料ガスは「反応生成膜」と呼ばれる薄膜を形成し、基板をうっすらとコーティングします。CVDで作られる薄膜の厚みは、およそ10~1,000nmです。

CVDの特徴は、3D形状に膜を作れるところ。薄膜生成用のチャンバー(空間)に原料ガスを充満させて作るため、細かい部分まで原料ガスが回り込みやすく、複雑で立体的な形状でも均一に薄膜を生成できます。

また、チャンバー内の真空度が低くても薄膜を生成することが可能です。これにより、加工を始めるまでの排気時間を短縮できます。量産化や価格を検討する際、排気時間から加工終了までの所要時間はとても重要な基準です。CVDは、薄膜を低価格で量産でき得る技術としても期待されています。

生成できる薄膜のバリエーションが豊富なのも、CVDのメリットです。原料ガスの材料によっては、高硬度で耐摩耗性に優れているDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コートを成膜できます。赤外線透過性能を高める、硬度の高さを優先するなど、要望に合わせてさまざまな成膜に柔軟に対応することが可能です。

CVDは、原料ガスの分解方法によって大きく3つの種類に分類できます。まずは、熱CVD法です。その名の通り、原料ガスの分解を熱の力を用いて行います。基盤の温度を、原料ガスを分解できる温度まで上昇させて薄膜を作るのが特徴。金属薄膜の場合は500~700℃、金属窒化物薄膜や炭化物薄膜の場合は700~1,000℃とかなり高温なため、基板には耐熱性が求められます。

続いて紹介するプラズマCVD法は、原料ガスの分解にプラズマを使用します。熱CVD法より基盤の温度が低くても、薄膜を生成できるのがメリット。一方で膜圧や膜質の均一化が難しく、サイズが大きい基板への薄膜生成にはあまり向いていません。

最後に紹介するMOCVDでは、原料ガスの分解に有機金属化合物を使用します。有機金属化合物とは、金属と炭素の結合を持つ化合物のこと。膜圧が比較的均一で、薄膜を高速成長させられるのが特徴です。LEDや半導体レーザなど、様々な製品の製造にも用いられています。