EMC(イーエムシー)とは、電気・電子機器が発する電磁妨害(ノイズ)がほかのシステムに影響を与えず、またほかのシステムからの影響を受けても正常に作動する耐性のことです。英語の「electromagnetic compatibility」を略した言葉で、日本語だと「電磁両立性」「電磁共存性」「電磁的両立性」などと表現されます。
EMCは、電磁的に同じ環境にある機器やシステム同士が互いに影響し合ったり、影響を受けたりすることなく、個々が設計通りの機能を十分に発揮できている状況を指すこともあります。他の機器やシステムからの影響を受けないようにするには、ノイズ耐性やイミュニティ(EMS)を向上させることが大切です。周囲に自身が発するノイズの影響を与えないようにするには、発生ノイズの対策やエミッション(EMI)を行います。
EMCにおけるノイズは、「自然ノイズ(natural noise)」と「人工ノイズ(manmade noise)」の2種類に分類できます。自然ノイズとは、自然現象によって起こされるノイズのことです。主に熱ノイズ、雷放電ノイズ、太陽ノイズ、宇宙ノイズなどが挙げられます。人工ノイズは、人工的に作られた機器が発するノイズのことです。現在私たちの身の回りにあるほとんどの電子機器が、人工ノイズの発生源になり得ます。周囲からの影響を受けたり他の電子機器に影響を与えたりせず、快適に電子機器を使うためにも、EMCの存在は重要です。
EMCの歴史は電子機器のなかでも比較的古く、1800年代後半から1900年代初頭ごろにはノイズが電子機器に与える影響が問題視されるようになっていました。事の発端は、無線局同士の干渉が原因で発生した無線通信の障害です。1904年には、当時のアメリカ大統領のルーズベルト大統領が、私的無線局は商務省、政府の無線局は海軍の管理下に置くよう、大統領令を発令しました。
ラジオ放送の普及に伴いラジオ機器を使う人が増加すると、さらにノイズの問題は顕著になります。この問題を受け、1934年には米国連邦通信委員会と国際無線障害特別委員会が発足しました。第二次世界大戦後、デジタル機器が普及すると受信機の障害や機材の誤作動などが相次いで発生。これを受け米国連邦通信委員会では独自の規定を設けたり、日本では情報処理装置等電波障害自主規制協議会が発足したりして、デジタル機器への規制を行うようになりました。
EMCの対策としては、機能接地、中性線接地の維持、電子基板の設計などさまざまなことが行われています。特に機能接地はEMC対策の基本的な方法で、回路や線路、寄生容量に留まる性質がある電磁エネルギーを、大地に放出してノイズの影響を軽減します。機器の性能や機能を維持するためにも、機能接地は重要なEMCの対策方法です。