FIBとは、きわめて細く絞ったイオンビームのことです。英語の「Focused Ion Beam」の頭文字を取った言葉で、日本語だと「集束イオンビーム」と表現できます。微細加工や観察、蒸着(蒸発および気化させた金属試料分子を基材の表面に堆積させ、薄膜でコーティングすること)など、幅広い用途があります。

FIBを照射する際は、専用のFIB装置を使うのが一般的です。微細加工をするときは、ガリウム(Ga)のイオンビームを使用します。集束イオンビームを当て、試料表面の原子を弾き飛ばすことで削ることができます。集束イオンビームは数100umから数umまで絞れるため、ナノ領域のかなり微細な加工を施すことが可能です。加速電圧と電流密度が高いほど加工速度も速くなりますが、試料表面のダメージも大きくなります。弾き飛ばされた原子は周囲に再び堆積するため、適宜取り除かなければなりません。

FIBでは試料との最初の衝突でほとんどの運動エネルギーを消費するため、試料の表面を画像化することができます。特に走査イオン(SIM)像では、金属組織の結晶包囲の違いによるコントラストなどを観察することが可能です。

FIBによる蒸着には、直接蒸着法と集束イオンビームアシスト蒸着法の2種類があります。直接蒸着法は、金属を低エネルギーのイオンビームにして、試料を薄膜でコーティングする方法です。半導体素子の金属配線に応用されることもあります。集束イオンビームアシスト蒸着法は、試料の表面に吸着したガスがイオンビームにより分解されることを利用した方法です。蒸着する元素は、吸着するガスの種類に応じて使い分けます。

FIBは、SEMと複合化することでさらに増加させることができます。SEMとは「scanning electron microscope」の略で、走査型電子顕微鏡のことです。FIBで加工した断面をSEMで観察することで、試料の内部構造を詳細に把握できます。さらにEDXも組み合わせると、異物等の元素分析も可能です。

またFIB加工とSEMの観察を繰り返すことで、試料の三次元解析や、再構成した試料の

3D表示などもできるようになります。再構成後は任意の位置の断面をコンピューター上に表示し、構造を確認したり寸法を計測したりできます。

さらに、試料内の不良や欠陥といった注目部位は、ピンポイントでTEM(透過型電子顕微鏡)を使って解析すると、マイクロサンプリング法が使えます。FIBの基本的な機能にマニピュレータを組み合わせることで、注目部位を含むブロックを摘出し、薄膜化加工を施せます。