HDCP(エイチディーシーピー)とは、デジタルコンテンツの不正コピーを防ぐことを目的とした著作権保護技術のことです。英語の「High-bandwidth Digital Content Protection system」の頭文字を組み合わせた言葉で、アメリカに本社を置くインテルが2000年に開発しました。映像や音声を出力・伝送する際、信号を暗号化して著作権付きの情報を保護します。

HDCPに対応している端子は、デジタルコンテンツを送り出す側と受け取る側のそれぞれに固有の暗号鍵が内蔵されています。この暗号鍵を利用し、暗号鍵の交換、正規のHDCPに対応している機器であること認証、デジタルコンテンツの暗号化と復元を行います。

従来、デジタルコンテンツの伝送はアナログ信号を用いていたため、信号を傍受しコンテンツを複製しても、元のデータを完全に復元することはできませんでした。しかしパソコンからディスプレイへ映像信号を転送する「DVI」や、テレビとゲーム機・ハードディスクレコーダーを繋ぐ「HDMI」などではデジタルデータをそのまま伝送できます。このままではなりすましや信号の盗聴による複製の作成が発生する可能性があったため、デジタルコンテンツのデータを暗号化して保護するHDCPが生まれました。

2000年にインテル社がHDMIを開発した頃は、接続方式ごとにバージョンが決められていました。一例を挙げると、DVI用がバージョン1.0、HDMI用がバージョン1.1、DisplayPort用がバージョン1.3です。バージョン2.0以降は接続方式の壁を取り払い、汎用性を備えた仕様になりました。バージョン2.2では、2Kと4Kに対応できるようになっています。

電子機器同士をHDCPに対応していないHDMI端子で接続している時や、アナログ出力を使用している場合は、画質の低下や正常に再生できないなど不具合が発生します。デジタルコンテンツを快適に楽しむためにも、HDCP対応機器を使うことは大切です。

ただし、HDCPも万能ではありません。2010年9月にはマスターキーが漏洩し、暗号を突破するとHDCP非対応の機器でも正常にデジタルコンテンツをダウンロードしたり、再生したりできる事態になりました。そこでBlu-ray Disc(ブルーレイディスク)やHD DVDではAACSという新しい規格を設け、海賊版の作成を防ぐことを試みています。

またAACS以外にも、著作権を保護するための仕組みが次々と登場しています。Windowsが展開するデジタル著作権管理サービス「Windows Media DRM」や、iPod・iTunes・iTunes Storeのデジタル著作権管理に対応している「FairPlay」はその代表例です。IT化やAIの進化により、デジタルコンテンツの著作権保護は今後さらに重要になると予想されており、著作権保護の技術向上も期待されています。