ICは、「集積回路」を意味する「Integrated Circuit」の頭文字を取った言葉です。電気製品に使用するトランジスタ、コンデンサ、抵抗などを小型化し、微細なシリコンチップに集積させて作ります。例えばトランジスタの場合、通常のサイズは数mm角なのですが、ICに集積する際は視認できないほど小さくして、十数~20mm角くらいのチップの上に1,000万~数億個も乗せます。ICの登場により、高集積化と製品サイズの小型化ができるようになり、電子機器の性能と利便性は飛躍的に上昇しました。

ICが登場する前は、主に真空管やトランジスタが使われていました。まず、真空管は1940年代まで電子部品として活用されていたのですが、管が必要なぶん小型化が難しいのが何点でした。風向きが変わったのは1940年代後半で、点接触型トランジスタと接合型トランジスタが登場。「トランジスタ1つが、真空管1本に代わる」とも言われ、コンピュータ市場は急速に拡大しました。

1959年にはアメリカのテキサス・インスツルメンツ社のキルビー、フェアチャイルド社のノイスなどがバイポーラICを発明し、半導体の製造がさらに活性化します。その勢いは、1965年にゴードン・ムーア氏が「集積回路に必要な部品の数は毎年2倍になり、この傾向が10年は続く(いわゆるムーアの法則)」と予想するほどでした。電気製品におけるICの使用量は、急激に増加。特に電卓市場では、1960年代後半から1970年代後半にかけて、世界中で激しい競争が繰り広げられました。

ICを製造する際は、まずはシリコンウェハーの上に、数mmから15mm角のICをたくさん作ります。次に、シリコンウェハー上にできたICを1つずつチップとして切り出し、パッケージに入れていきます。ICチップをパッケージに入れてから電子機器に組み込む理由は、ICチップが小さすぎてそのまま入れると接続が難しいため、そしてICチップの損傷を防ぐためです。パソコンの部品として使用されている、ムカデのような見た目のものの中に、ICチップが隠されています。

ICには、用途に合わせて様々な種類があります。ロジックICは、主にデータの演算や変換、処理などを行うICです。コンピュータの心臓部であるマイクロプロセッサにも使われています。メモリICは、データの記録を行うICです。コンピュータやデジタル機器のメインメモリ、ストレージなどに使われます。メモリICは、任意に読み書きができる「RAM」と、記録済みのデータの閲覧のみができる「ROM」の2種類に、細分化することも可能です。