N型半導体とは、シリコン単結晶にリンやヒ素、アンチモンを不純物として添加させた半導体のことです。シリコン単結晶の真性半導体は、もともと電気を通す性質をほとんど持っていません。このままでは電流の制御ができないため、Ⅴ族の元素をあえて添加させ、電気抵抗を減らして半導体としての機能・性質を持たせようとしたのです。

N型半導体の中には、電流の元である電荷の運び手として、エレクトロンが存在しています。N型半導体の中にある多数キャリアはエレクトロン、少数キャリアはホールです。電子が充満しているため、電子が自由に動けない「価電子帯」には、実際は室温付近の温度に触れて価電子帯から伝導帯へと直接励起されるエレクトロンが存在しています。しかし、N型半導体として活用するにはエネルギーが足りないため、Ⅴ族の元素を不純物として添加し、馬力アップエネルギーとして活用することにしたのです。

シリコンとリンを例に挙げると、シリコンは4個、リンは5個の価電子を有しており、リンの価電子は1個余ります。つまり、不純物として添加したリンが、電子が存在できない禁止帯中の伝導体に、「ドナー準位」というエネルギーレベルを生成したことになるのです。

ドナー準位から、伝導帯までのエネルギーギャップは、シリコン半導体の約20の1と小さめ。余ったリンの価電子は、室温付近の温度で伝導帯に放出され、フリーに動き回れる自由電子になります。自由電子は電圧をかけられるとプラス極へと自然に引き寄せられ、シリコン単結晶の真性半導体に電流を通すのです。

抵抗率も、自由電子がない半導体と比べると10分の1にまで低下し、導体に近くなります。電子のことを「エレクトロン」、エレクトロンのなかでも自由電子のことは「キャリア」と呼びます。エレクトロンはマイナス(Negative)電荷を有しているため、頭文字の「N」を取ってN型半導体と名付けられました。

半導体の電流の流れやすさ(電気伝導度)は、多数キャリアの数で決まります。半導体の電気伝導度は、電気抵抗率で表されます。電気抵抗率と不純物の濃度は反比例の関係にあります。ただし、不純物濃度が増加すると移動度は減少するため、正確な反比例にはならないことを留意しておきましょう。添加されるⅤ族の元素やドナーの量によって多数キャリアの数と電気伝導度も変化することを活かすと、半導体の性質も変えられます。これにより、現在のような様々な半導体製品を造れるようになりました。