P型半導体とは、シリコン単結晶にボロン、ホウ素、インジウムといった3価元素を不純物として添加させた半導体のことです。シリコン単結晶の真性半導体は、もともと電気を通す性質をほとんど持っていません。このままでは電流の制御ができないため、電子が移動して電流が流れる仕組みとして、P型半導体が生まれました。

P型半導体の中には、電流の元である電荷の運び手(通称:キャリア)として、ホールが存在しています。P型半導体の中にある多数キャリアはホール、少数キャリアはエレクトロンです。電子が充満しており、電子が自由に動けない「価電子帯」には、実際は室温付近の温度に触れて価電子帯から伝導帯へと直接励起されたホールが、ごく少量だけ存在しています。しかし、P型半導体として活用するにはエネルギーが足りないため、Ⅲ族の元素を不純物として添加し、馬力アップエネルギーとして活用することにしました。

シリコンとボロンを例に挙げると、シリコンは4個、ボロンは3個の価電子を有しています。ボロンの電子が1個不足した場所は「ホール」と呼ばれる正孔になり、電圧をかけると近くにある電子がホールへ移動するようになります。すると、移動した電子がもともといた場所が正孔となり、次々と正孔の位置が-極側へと移動することに。P型半導体で実際に動いているのは電子ですが、ホールを+の電気を持った電子ともみなせます。

ボロンからの視点だと、電子を受け取れる状態のホールが、価電子帯から電子を受け取り、動けない負イオン化した不純物原子(アクセプタ)ができたと考えられます。価電子帯で拘束されていた電子はアクセプタ準位までのエネルギーギャップが小さいため、アクセプタまで簡単に受領され、価電子帯に自由ホールができます。逆に考えると、アクセプタは価電子帯へホールを放出していると考えることも可能です。

半導体の電流の流れやすさ(電気伝導度)は、多数キャリアの数で決まります。半導体の電気伝導度は、電気抵抗率で表されます。電気抵抗率と不純物の濃度は反比例の関係にあります。ただし、不純物濃度が増加すると移動度は減少するため、正確な反比例にはならないことを留意しておきましょう。添加されるⅤ族の元素やドナーの量によって多数キャリアの数と電気伝導度も変化することを活かすと、半導体の性質も変えられます。これにより、現在のような様々な半導体製品を造れるようになりました。