SiCウェハーとは、ケイ素(シリコン・Si)と、C(炭素)で構成された半導体の材料の1つです。SiC(炭化ケイ素)の結晶体は、地球上には存在しない物質のため、全て人工的に化合して製造します。シリコンウェハーよりも、バンドギャップ幅が約3倍広く、熱伝導率も約3倍優れているのが特徴です。絶縁破壊へ至る電界強度も、シリコンウェハーより約10倍強く、鉄道や自動車に使うパワー半導体のほか、RFアンプ、LED(発光ダイオード)の基盤にも使われています。
SiCウェハーを製造する際は、SiとCのパウダーを合成し、SiCパウダーを造るところから始まります。次にSiCパウダーを種結晶の表面に蒸着させ、「インゴット」を生成。インゴットは昇華法を用いて、単結晶化させます。単結晶になったインゴットはウェハー状にスライスし、研磨・洗浄・検品の工程を経て、SiCウェハーの完成です。
SiCウェハーの課題は、製造コストの高さです。SiCウェハーを製造する際は、昇華法という方法を使用します。この昇華法、近年では改善傾向にありますが、「マイクロパイプ欠陥」と呼ばれる、微細なパイプ状の結晶欠陥が発生しやすいのが難点です。「マイクロパイプ欠陥」が発生したSiCウェハーをデバイスに使用すると、不具合の原因になり得ます。
また、昇華法の工法の都合上、バルク結晶から基盤を切り出す際は、斜めに切る必要性があります。斜めに基盤を切り出しているとロスが発生しやすく、必要な数のSiCウェハーをすぐには造れないため、製造コストが上昇しやすいのです。
製造コストを抑えるため、各社が研究開発を進めており、新日鉄住金(旧・住友金属工業)によるTSSGの試みも、その内の1つです。TSSGでは、結晶材料を液化させたものを使用します。均熱管により、液化している結晶材料の全体が同じ温度になっているのが特徴。液化させた結晶材料に種結晶を付け、固形化した結晶材料をゆっくりと引き上げて、結晶を作ります。
ウェハーを半導体の部品にする際は、必要な回路を書き込まなければなりません。回路を書き込んだウェハーは小さく分離され、半導体のパーツとなります。ウェハーの径が大きい方が、パーツをたくさん製造でき、製造コストも軽減にもつながるため、大口径化が求められるのです。しかし、現在SiCウェハーの製造によく用いられている昇華法は、大口径化には不向きなのが実情です。SiCウェハーをはじめ、半導体に使用するウェハーは、大口径化の研究開発が進められています。